空鞘橋(そらざやばし)という一風変わった名前の橋を渡って本川の西岸に行くと、寺町という街が広がります。
本川の東岸には中央公園と広島城。ちょうど、本川と天満川の分岐点から十日市方面に広がる街です。
紙屋町方面から広電に乗れば十日市の交差点をぐるっと右手に周り、寺町、別院前という電停が横川の前に続きます。
寺町電停が実際には寺町の南端よりもやや南寄りにあり、別院前の方が寺町の中心よりやや北にある、という中途半端な感じですが、ともあれ、その名の通り、「寺の街」です。
広島は市内にあまり寺がありません。
広島自体は特に室町時代以降、安芸門徒と呼ばれる保守的な浄土真宗が栄えてきた土地柄ですが、その割には寺が少ない。それはもちろん、原爆で吹っ飛んだからですが、この寺町だけは、今でも寺が密集して存在しています。
寺町の電停を挟んでお向かいの広瀬町には、広島市の総鎮守である廣瀬神社もあり、この中州の先端はありがたい地域でもあります。
寺町は場所柄、今では考え付かないほどの一等地だったと言えるでしょう。
特に戦前にかけては、広島城を本川(当時の太田川)を対岸に、南には当時最も栄えていた西国海道、今で言う本川町があり、さらに今の平和公園を越えて南側には繁華街であった中島町が、また天満川を渡った北側には横川があり、市街地が東に移動する前には、まさに要所にあった訳です。
そんな寺町も、今では市街地の外れのひっそりとした寺の街。
特に本川沿いから望むと、何だか市街地から別世界に紛れ込んだ様な印象すら受ける場所です。
この辺りはさすがに民家も少なく、代わりに幼稚園がいっぱいあります。
お寺さんってのは幼稚園を併設することが多いですからね。
天満川の向こう側の中広あたりに住む子供達が多いそうです。十日市あたりに住む裕福な家の子供達は案外少ないんだ、と聞きました。
なるほど、確かにバンの様な幼稚園バスが朝夕子供たちを連れて天満川を越えていくのが見えます。
寺町の中心は別院前電停に程近い、寺町4丁目交差点と、そのもう一つ南にある寺町5丁目交差点。中心と言っても別にお店があるわけではなく、立派なお寺さんがあるってだけですが、まぁ寺町ですから。
特に晴れてる日とかだと、線香の香りが街中に漂っていて、失礼を承知で言えば散歩していても何だか別世界。夏は暑くてやってられないでしょうから、春秋が散歩には適してるんじゃないでしょうか。
いるんだか知りませんが、初秋にコオロギの音でも聞きながら散歩できるといいですね。
寺町の北側に向かって4丁目から登っていけば、仏具屋さんが並び、やがて生まれたばかりの天満川に架かる横川橋が見えてきます。
横川橋を超えればもちろん横川本通りですから、またまぁ俗っぽい街につながっていくもんです。
全国津々浦々、寺町ってのは案外そんなもんですが。
広島には「仏壇通り」という名前の通りがあって、それは寺町ではなく、なんと西日本随一の繁華街、「流川」の中心を走っています。
これも不思議な話ですがね。本当に仏壇屋さんが数件並んでいて、昔はもっとあったそうです。
そちらの仏壇通りに比べると、こちら寺町の仏具屋さん通りは随分と静かなもんです。
私の家では寺町に親族知人の墓とかが無かったもんで、あまり馴染みの無い街ですが、近くの猫屋町にあったもんですから、夏には墓参りに行きました。ほら、6日とか、お盆とか、茹だる様な暑さですよ。
その後で連れて行ってもらっていた高木の宇治金時の美味い事美味い事。
話がすっかりそれましたが、市内から寺町に行くには相生橋を渡って、本川沿いを川の流れに逆らって進み、寺の鐘が見えたら適当な道を左に折れればたどり着きます。
市電なら別院前が便利です。別院前電停を過ぎた広電は、新横川橋を渡って、横川一丁目、そして終点横川へと続いていきます。
暑い夏に行こうか、っていう人は是非朝方に。
十日市にある和菓子屋「高木」さんまでは寺町から歩くと結構あります。(15分ほど)
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