広島の郊外 : 呉 2013 (1)
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フライケーキを齧り齧り歩く呉の街。相も変わらずこまごまとした通りに色とりどりの看板がひしめき、街角ごとに匂いの変わる楽しさがある散歩です。
前回(広島の郊外 : 呉 2013 (1))も書きましたが、数年前と景色は変わらないけど、なぜかまたちょっと元気を取り戻しつつあるような気がするのは天気のせいでしょうか。
ひいき目込みで見て、福山や尾道よりもシャッターの下りた店も少なく、幟が昼から出てる店も多いんですよね。昼下がりになると仕込みの音が響き、酒や食材を積んだ軽トラックが狭い道を行きかう音が聞こえてくる。
呉の道は、中通(通称「レンガ通り」)というアーケードを中心に縦横に、きれいに格子状に流れます。
南東側に本通(国道185号線)がでーんと走り、反対の北西に境川が流れる。南に行けば国道31号線、そして呉線が通っていて、さらに行けば大和ミュージアムがあって呉宮原へと通じる。
逆にレンガ通りの北側の先は市役所に通じて、斜めに流れた境川に吸収される。そこから横に出れば広島呉道路の入り口があります。
それらに囲まれたレンガ通りとその周辺は、飲み屋、キャバレー、純喫茶、デパート、おもちゃ屋、一膳めし屋、衣料品店、お好み焼き屋、駐車場、呉服屋、御茶屋にスナックと、ジグソーパズルのように、通りの色を鮮やかに描きながらも雑然としています。
かつて、「呉の街を肩で風切って歩きたかったんよ」と言われた飲み屋街と、おもちゃ屋は、実は目と鼻の先にあり、如何にも呉じゃのぅ、と思わず苦笑いしながら、あっちこっちと歩き回るうち、ついつい二つ目のフライケーキに手が伸びます。
(福屋デパートのあるレンガ通りを一本脇に入れば、スナックやスタンドが並ぶ飲み屋街。それが呉の街)
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街角を歩いていると、そこらじゅうで「海軍の街」を感じることができるのも呉の特徴ですね。街中に船の模型があったり、海軍服を売っていたり。広島の郊外 : 呉 2013 (1)の冒頭の写真にあるのも、船のイカリのオブジェですし、そのあとの写真の境川の橋にあるのは、ランプのオブジェでしょうか。
あ、ここにこんなものが、と探しているわけでもないのに目に飛び込んでくる。
いいんだか悪いんだか、過去を引きずっていると言ってしまえばそれまでなんでしょうけど、やっぱり呉にとっては船こそが街の礎を築き、海軍こそが街を発展させたんですよね。やっぱり、海の街なんです。
海賊と恐れられた、村上水軍の頃から、ずっと。その空虚ともいえるプライドが、愛すべき呉の象徴。
あと呉=海軍のラインで忘れてはいけないのが、珈琲ですよね。
呉は珈琲に限らず、実はお茶のお店も多い。「喫茶を嗜む」、そういう気概あるんでしょううね。市内からお茶を買いに行ったりする人も多いです。その線で言えば、パン屋さんもよく目につきます。珈琲屋さんはいわゆる純喫茶的なお店から、新しいカフェまで、実に様々なお店が並んでいます。
特徴的なのはどのお店も間口が広く、比較的オープンな点でしょうか。一見暗そうな純喫茶のお店でも曇った窓ガラス越しに店内を覗くと、案外明るい雰囲気だったりします。
むしろ意外なのはお好み焼き屋さんが少ない点ですよね。広島県内の主要都市で人口あたりのお好み焼き屋なんて統計をとったら、もしかすると呉はかなり少ない方なんじゃないかと思います。
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気概・文化なんて面もあるんでしょうが、きっとたぶん戦後の食糧事情なんかもあるんじゃないかな。ボロクソに壊された市内と、海軍貯蔵物資が戦後に闇市に弾けだしていち早く賑わった呉と。
なんでもかんでも海軍の高貴なイメージを持ち出して、呉では洋食が栄え~なんて自賛しちゃいけません(笑)。
(珈琲屋とカフェ。そしてお茶屋。並木通りよりも喫茶店は多いんじゃないだろうか)
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実は我々一行は、呉から足を延ばして音戸方面へと遠征したのですが、帰り際、呉に戻って珈琲を飲もうとしたら、まだ夕方5時前なのに、「もう5時には店を閉めるんよ」と言って断られてしまいました。「なんやそりゃ」とかなんとか言いながら、そこから十メートルあまり、とぼとぼと別の店に「まだえぇでしょうか」とヤケに下手になって暖簾をくぐると、今度は頼んでもないのに和菓子は出てくるわ、自家製のブルーベリーは出てくるわ。
思わず、さすが呉!!(笑)
この愛すべき商売っ気の無さ。これが呉気質ってもんでしょう。
でもまぁ嬉しかったです。正直、もうちょっと寂れとると思ってたし、空き店舗にチェーン店が続々進出してたらヤダなぁ、と思いながら行ったので安心しました。やっぱり、呉は呉。
決して光輝く洋々たる前途が待っている街ではないでしょうが、若い人が新しいお店を開いてるのもチラホラ見えました。呉にUターンしてきた人たちでしょうかね。経営は苦しいでしょうが、応援したくなります。
我々一行も、「なんか呉また来てもえぇね」と言いながら帰路につきました。なんだか知らないけど、満足しました。「呉らしさ」が楽しかった。
過去と現実のはざまを、得意の海軍気品と港町特有のいい加減さですり抜け、世間ずれをあざ笑う広島市民を意地でも鼻で笑う。なんだか板についてきた「呉根性」がパズルのような街の隅々に宿り続けている限り、呉人たちは、愛すべき街の景色を残していってくれるような気がします。
黄色い呉線はそんな呉人を乗せて、(季節外れの鯉のぼりが引っかからん限り)明日もまたガタゴト瀬戸内を走ります。
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