小雨降り続くじめっぽい日ですが、引き続き尾道を歩いてみましょう。
尾道の市街地、というか、旧市街地になるのかな。
薬師堂通りを挟んで東西2ブロックほどがそうです。西側には商店などが並び、東側には飲食店やスナックなどが並びます。
そちらに出かける前に、まずは旧市街地の西の端、浜の小路を通って瀬戸内海に出てみましょう。
(住吉神社の脇には尾道渡船の碇泊場がある。往年の港町を髣髴とさせる石造りの建物が続く)
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尾道の目前には向島という大きな島があるという話は前回少し触れました。
この狭い海道を渡すべく、尾道にはいくつもの渡船場が残っています。現役のものだけでも4箇所。かつては其処彼処から船が行き来していて、海道を横切るのに一日かかると言われたほどでした。
現在ではしまなみ海道の一部として尾道大橋と新尾道大橋が向島とを結び、渡し船に乗る人の数も、渡し船の運行数自体も大きく減ってしまいましたが、それでも少しの車と、自転車や人を乗せた渡し船がゆっくりと陸地と島とを往復する姿は尾道ならではでしょう。
NHK連続ドラマ小説「てっぱん」やアニメ「かみちゅ!」でも印象的に使われていたシーンの一つです。両者とも、主人公は向島側にいるって前提なんでしょうね。
向島の尾道側には工場(主に造船鉄鋼工場)やドッグが並びます。
今でも結構操業は続いていて、季節によっては多くのクレーンが動く姿を見ることができます。
住吉神社ってのは、海運・商業の神様を祭った神社だと言われています。
まさに尾道にピッタリの神様ですね。
住吉神社の向こう側には雄大な尾道大橋・新尾道大橋の姿が見えます。
向島のさらに向こうには因島があって、時期に愛媛県です。
結構山の険しい島で、尾道側の崖にへばりつく様な一角だけが、工業地帯ですね。
そんな海沿いの風景を見ながら薬師寺通りに戻りましょう。
海沿いにはレンガ造りや古い鉄筋コンクリートの建物が見え、戦前の頃の繁栄を僅かに感じる事ができます。そういった建物を見ながら薬師寺通りにでると、「西山本館」という有名な旅館があります。
そう、フジテレビの西山喜久恵アナのご実家ですね。泊ったことはありませんが、外見だけでも立派な旅館で、また尾道に残っている数少ない、古くからの旅館でもあります。
その旅館のお向かいにあるのが、中華ソバの「朱華園」さん。
尾道らーめんってのが一時期(?)もてはやされましたが、その元になると言ってもいいかもしれない老舗の中華ソバ屋さんですね。まさに昔ながらの中華ソバで、アツアツのスープでむせっかえる様な店内が病み付きにさせてきます。寒い日に食べるのも暑い日に食うのも、いいです。
この辺りの建物は年季が入っていて、「朱華園」さん何かは新しく作り直してる部分もあるんでしょうが、昭和初期の趣を十分に残した造りになっています。
その薬師堂通りを東側に入っていくと、景色が一変します。
それまでの昭和初期の風景から、一気に昭和中期、つまり30年から50年ぐらいにかけての風景へ。
尾道が海運業などで栄えた時代に軒を連ねた、飲み屋、風俗、喫茶店、スナック、小料理屋、そういった店店が所狭しと並び、入りくった路地にびっしり張り付いています。
細々と営業を続けている店、まだ何故か儲かってそうな店、奇特にも新装開店された店、壊れたガラス、動かないエレベーター、降りたままのシャッター、雨に濡れたねずみ色のコンクリート。合法・非合法、金酒金女金。夕暮れに迷い込んだら泣き出しそうな、それでいて何処か懐かしい風景が3-4ブロックほど続いています。
地名で言うと石屋町って場所ですね。今も何だか更地を作っていて、たぶん10年と持たず消えていく風景だと思います。でも、私の思い描く尾道の素敵な風景の一つです。
薬師堂通り側からの目印はレトロな尾道歴史博物館と土間に酒を並べたお酒やさんですね。
本通りから入るなら、パッと見で分かる看板がでてますよ。
(薬師堂通り側から米場町通りに沿ってはいるとこういった風景で街が始まる。それにしても、何と美しい町名の数々!)
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(石屋町の風景と、本通り商店街から石屋町に抜ける所にある看板)
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尾道の旧市街は今はすっかりお爺ちゃんお婆ちゃんの街ですが、やっぱりこの街に何十年と住んでる背中は、それはそれで絵になるんですよね。
尾道は路地と坂の街で、若いうちはみんな原付にのって移動します。年を取られてトボトボと辛い坂道を歩かれる姿は、それはそれで感銘を受ける光景でもあります。旧市街の辺りは平坦な街並みですが、路地も多くて、色んな生活風景に出会う事もできます。
是非、そういった尾道らしい、また旧市街らしい風景にも足を止めてみてください。この小さな港町の持つ味わいが一層深くなると思います。
さてさて、中華ソバでも食って、喫茶店で休んだら、ちょっくら坂でも上りますかね。
ほおって置いても名残惜しさを感じさせる旧市街に別れを告げて、次回はいよいよ千光寺参りです。雨中の石段を頑張って踏みしめるとしましょう。
千光寺から眺める尾道の風景は、雨の日も、晴れの日も、春霞の日も、冬の澄んだ空気の下でも、夏のうだるような暑さの下でも、尚一層、美しい風景です。
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【関連する過去ブログ】
広島の風景 : 呉線
広島の郊外 : 尾道(1)
広島の郊外 : 瀬野
広島の郊外 : 西条
広島の郊外 : 広島空港
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