さて、さながら映画セットのような区画を抜けて5分ほど南に歩き、バラ公園(福山市ばら公園)を訪れると、きっとその大きさにビックリすることと思います。
思いのほか、広い。ざっとサッカーコート一面分ぐらいはあって、その半分ぐらいがバラ園になっています。
なぜ福山とバラがつながったのか、詳しい事は知りませんが、無料で入れる公園としてはかなり整備されていて、立派なもんですね。
珍しい(らしい)品種もあったりして、名前が書かれた看板を見て回るだけでも面白いですよ。「ひろしま〇〇」だの、「〇〇ふくやま」だのって名前ものも多いです。
結構駅から遠いのが玉に瑕なんでしょうけど、せっかく福山に行ったなら訪れてもいい場所だと思います。季節によってはベンチに座って心地よい公園でしょう。
そんなばら公園から、今度は西に進路をとりましょう。少し斜めに南に折れながら歩いていくと大きな郊外型の天満屋が見えてきます。広島のアルパークをどうにかした感じ。なぜこんな所に天満屋が?
答えはもちろんその隣、JFEと共に、あるいは市内中心部にある分、JFE以上に福山経済を牽引してきた三菱重工さんにあります。
特に昭和中期、今の福山市商業区域を発展させたのは間違いなく重工業でした。呉や尾道も類似で、鉄鋼、重機械、造船なんかがセットで造られるんですね。呉はそごうでしたが、こちらは岡山が近い分、天満屋(本社は岡山)が発展の中心を担ったんでしょう。先日八丁堀からの撤退を決めた天満屋さん(広島のニュース : 変わる広島の街 ~①八丁堀天満屋の閉店と変わる広島繁華街の風景)も、福山は結構まだ踏ん張れているんでしょうか、お客さんも多かったです。
(左が郊外型の天満屋。丁度、広島の福屋の様に車で5分あまりの位置に街中型の店舗がある。右は三菱重工の福山工場。残念ながら活気はあまり感じられなかった)
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これまでに見てきた商店街、夜の街、それに天満屋とは別に、もう一つこうした重工業企業による昭和中期の発展の遺産が福山にはあります。遺産と言っちゃあ失礼か。存続か、廃止か。毎年の如く、ロミオとジュリエットみたいなやり取りをしている福山けいばがそれです。
福山競馬ってのは、「福山けいば」と書かれるんですが、益田が無くなった今では中国地方で唯一の競馬場になりますね。赤字の垂れ流しが酷く、2009年ごろから、毎年閉鎖が話題になってきました。どうにかこうにか黒字で2012年も仮存続が決まりましたが、もう風前の灯でしょう。
休日の廃校の様な雰囲気は風情があってきらいではなかったですが、まぁこれじゃあ無くなるよなぁ、と言う感じ。
そりゃあ昭50年代とかは結構なお客さん集めたんでしょうね。JFEの火が絶えず燃え盛り、重工からはトラックがひっきりなしに出入りし、商店街には人が溢れ、夜の街の灯は夜明けまで消えない。そんな頃。
今じゃあ建物も老朽化してますし、現在進行形で化石になりつつある動物が横たわっているような空気です。
でも、こうした風景が失われるのはやっぱり惜しい。どうにか一年でも長く続けて欲しいですけどね。
では福山は終わったのか。もう街としての終焉に向かっているのか、というと、明るいニュースもあるんですね。
鞆の浦の観光地化?
いえいえ、違います。それは青空の下、なみなみとたゆたう芦田川です。
重工業による発展は当時としては当然の事ながら地域の環境悪化を招きました。実際、芦田川は1960年代から水質悪化の一途を辿り、1972年以降、中国地方一級河川13水系の内「水質ワースト1位」の記録を38年間、更新し続けています(2011年現在)。
元々芦田川ってのは地形的な理由から洪水と渇水を繰り返す、非常に扱いの難しい河川でした。どうも江戸時代からずっと苦労していたみたいです。そこに向けて重工業の発展、それに街の人口増加、商業利用の増加が加わって、まさにヘドロの流れるような川と言われたもんです。
それに対して、行政が本格的な水質改善に取り組んだのは2004年ぐらいから。それまで30年間は、いわば小手先の対応だったのが、「芦田川環境マネジメントセンター(AEMC)」を設立し、官民をあげて改善へと取り組み始めました。
それから8年。晴れた日に川の傍の遊歩道を歩けば、紺碧の川が豊かに流れ、風の心地よい河原へと変貌していました。
行った日が良かった、というのはあると思います。天気も含めて。
実際、今でもワースト1位になり続けているわけで、水質改善が劇的な効果をあげているわけでは決してありません。改善のやり方にもたぶん賛否ある。
それでもこのプロジェクトはここ10年で唯一とも言っていい、福山市行政の成功だと思います。実際に河原を歩いて、私はこの街への愛着が増しましたよ。
福山の重工業からの脱却は中々難しいでしょう。産業は簡単には育ちません。
だからこそ、この芦田川の改善には注力して欲しいです。駅前の再開発なんて無駄な事は後回しにして、水質改善の技術を身につけ、住民の愛着、土着度を高めるべきです。その技術はやがて、同じような状況に喘ぐ他の街、国内外の河川にだって適用できるはずですしね。
(水質浄化への取り組みを示した看板と、中州への通り道。技術的なことは分からないですけど、プロジェクトの効果は出てると思います。水質だけじゃなくて、河川敷も含め、愛着を持てる川にしていって欲しいです)
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今回はちょっと長くなりましたが、これで一通り福山市内を見て回りましたね。
でも、これで終わりじゃないんです。次回、最終回は、福山の街、番外編!ちょっと違った福山の街の不思議スポットをお届けします。
その前に、水質改善プロジェクトへのエールをこめて。
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【関連する過去ブログ】
広島の郊外 : 福山(1)
広島の郊外 : 福山(2)
広島の郊外 : 尾道(1)
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広島の街 : 広島駅前(新幹線口)
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広島の街 : 広島城
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