白壁の続く西条の街並みです。
広島の会社:賀茂鶴でも紹介しましたが、駅からものの5分ほど歩くと、白壁の酒蔵、酒造工場が続く、稀有な雰囲気の中に誘い込まれます。
道は細く、入り組んでおり、自分がどこにいるのかわからなくなるほど。
最近では下のような酒蔵マップがいたるところ立ってはいますが、
それでも初めて行った人は道に迷うと思います。
西条は元々山陽道の宿場町。
現在は東広島に属し、少し西条駅からは離れたところに新幹線の東広島駅も作られています。
宿場町では綺麗な水と内陸の気候を背景に酒造りが盛んになります。
近隣に広島市や呉といった大きな攻撃目標があったことから、太平洋戦争でも比較的被害は少なく、かつての街並みがそのまま残されている場所も多いです。
街中であっても、田んぼのある風景も残されており、美しい鳥達が集まるような場所もあるようです。
一方こちらは現代的な殺風景の駅前。
西条は広島大学のキャンパスにも近く、ある程度学生も住んでいる割には、街に活気がありません。
かつて広島大学のメインキャンパスが広島市内に未だあった時代、20年くらい前の方が、よほど活気がありました。
それから山陽自動車道(高速道路)ができ、新幹線東広島駅ができ、国道2号線のバイパスができ、駅前が整備され、広島大学のキャンパスが医学部を除き西条郊外に移動し、酒蔵マップなるものが作られ、なぜか街からは活気がなくなりました。
街づくりの難しさをあらためて感じさせられます。
移動手段が便利になったことは、「西条に人を呼び込む」ために寄与するのではなく、
「西条から広島市内に出かける」手段の向上に寄与しました。
お陰で、市内に出ることが「億劫な」年寄りだけが、西条で買い物をしています。
酒蔵が続く風景は確かに素敵です。
単なる史跡ではなく、現在も使われているため、いい意味で観光地化もしてませんし。
ただ、年に一度観光に来てくれるだけの街では、やはり活気はなかなか生まれません。
いくつかカギはあるかと思うのですが、
一つは、やはり主要産業である日本酒メーカーの景気が上がること。
ここ数年の街の凋落は日本酒メーカーの売り上げ推移と無関係ではないでしょう。
一口に上がれば、と言っても難しいですが、これ抜きに街の発展も難しいでしょう。
二つ目は、居住している人に対する娯楽施設の充実。
観光地には間々あることなのですが、どうしても居住者に対する娯楽施設は限定的になってしまいます。
観光産業に携わる人が多い街ならともかく、西条のようにそれが一般の労働者である場合、やはり娯楽施設の充実は重要でしょう。
パチンコ屋しかない現状では、多くの人が広島市内に休日は出て行ってしまいます。
最後に、近年、西条近郊に製造業メーカーの工場がいくつか作られました。
2号線沿いにあり、広島空港が近いことや、水がある程度豊富で綺麗なことなど、西条は比較的工場の立地に優れた街です。
ただ、ここ一年の不景気の影響もあり、また上にあるような理由から、西条の街自体に彼らがあまりお金を落としていないのが現状です。
こういった立地条件を如何にプラスに生かしていけるか、が大切になると思います。
いずれにせよ、前現代的な観光産業に手を伸ばすのではなく、居住者を大切にした、彼らが西条の街並みに活気を与えてくれるような政策が今後求められます。
美しい白壁の街並みも、そこにいる人たちに、その産業に活気があってこそ、魅力的なものになるんじゃないでしょうか。
せっかくの街並み、もう一度、人が集まる「宿場町」になって欲しいですね。